第16号(2009/10/5)●8面
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「コモンズ(共に)」の夏季合宿に参加して

[講演]本山美彦「世界恐慌と社会変革」の感想

吉岡滋子 


 今夏、コモンズは夏季合宿を開催しました。講師に本山美彦氏他をお迎えし、総選挙の只中でしたが全国から集まり、学習と討議の場を持ちました。参加された吉岡さんよりその感想が届きました。あくまで講演に対する個人の感想ということです。なお、コモンズ編集部として、これらの講演とその問題提起の全体像について、講演者のご了解を得て、別途の形式で報告したいと考えています。――編集部。

辺境の革命と明治維新

「世界恐慌と社会変革」というタイトルで講演されました。現在、400万人の失業者がいるが、さらに600万人の過剰雇用があるといわれているので、将来的に1000万人の失業者の発生が予想されるという指摘から話が始まりました。
 そして、意外なことに話の発端は、戦前『貧乏物語』を著した河上肇が沖縄の伊波普猷という学者と親交があり、共に辺境の革命を模索していたというエピソードの紹介でした。この話の始まり方は大きな時代状況を語るのに、小さな名も無き、しかも最も片隅に追いやられている人々の立場に立って見ていこうという姿勢が如実に表われており、静かな感動を呼び起こしました。そもそも沖縄という言葉は、明治政府が作り出したものであり、その由来は本居宣長が作った言葉だということを教えていただきました。他人の土地を勝手に名づけた上でしかも支配しようという大和人の身勝手さが良くわかるエピソードです。続けて氏は先島諸島の住民にはもともと「清の領土」という意識があり、国境線はなかったが、近代国家に組み込まれて税を課されるようになったと指摘されました。琉球の自立・独立について沖縄県内では真剣に語られ始めており、独立すれば周辺諸国との交易で繁栄できると述べられました。独立の仕方は独立宣言をして、周辺の台湾・韓国・中国が承認すればできるということなので、「案外できそうかもしれないな、考えてみる価値があるのではないか」と思いました。
 また、明治以後の近代国家の成立に関して氏は独特の見解を述べられました。標準語は江戸を征服した長州藩士の言葉を普及させたものであり、長州藩は英国の阿片商人・グラバーと手を結び倒幕へと進んでいったという点を強調されました。明治維新・近代国家の形成を論ずる時に、マルクス主義学派は、天皇制や、農村分析はできたが、羽仁五郎を除いて国際関係論がなかったのが罪であると断言されたのが印象的でした。

国際金融の裏側

 その後、話が現代にもどり、国際金融の人脈はユダヤ人であり、ゴールドマンサックスがその良い例だと述べられました。ヨーロッパのユダヤ人は自分の住んでいた国が共和制になったとたん、米国に逃亡し、米国内に金融権力をつくりあげているのだそうです。かつてリンカーンは、「私の敵は南軍だけではない、東部の金融権力もそうだ」と述べていることを紹介しました。興味深いですね。また、氏は金融を扱う連中は、国家とは関係なく、ユダヤ系金融は中国の人民元と手を結ぶだろうと予測しています。金融の世界というのは私のような者には、計り知れない世界があるのだと驚かされました。さらに氏は、今の社会は金を借りた人間が借用証書を他人に転売することによって、富が借りた人間に移転するようにできていると述べました。貸し手責任がなくなって、無責任社会になっているのだそうです。国民の預貯金が企業の乗っ取り合戦に使われたということで、何となく怪しいことが起きているとは思っていましたが、ひどいことになっているんですね。ゼロ金利政策のため、高い運用利率を求めて資産が海外へ移転しているそうです。さらに投機によって石油や大豆などの価格が暴騰したのは、金額がつり上がることで資金を回収しようという狙いがあるからだと述べました。石油投機家のところに金が集まるシステムをゴールドマンサックスとAIGが作ったが、オバマ大統領はこれを解体できていないそうです。この点から言って、オバマをあまり持ち上げるのは問題だと強調していました。

国家に依存しない草の根の人脈づくりを

 氏はこのような魑魅魍魎の世界に対して「私たちは育てたい企業の株を売買目的ではなく買おう」と呼びかけられました。経営者は株を無料で組合に渡し、経営者委員会にも入ってもらう。前にも紹介しましたが、氏はこれをESOP(イーソップ)と名づけています。サンヨー電機が一時期これを導入していました。「私たちが牛耳れるお金を持とう」と氏は語っています。大阪府の北摂地域は生協と生産者が結合し、労働者供給事業で仕事をつくりだす独自の運動を行っています。必要なものは自分たちで作り流通させる。これが金融経済の動向に振り回されずにすむシステム作りの第一歩なのではないでしょうか?言うは易く行なうは難しですが、いつか少しでも実現できればいいなと思いました。
 最後に氏は「イスラエル・ユダヤ人の悲願は全世界を制覇することだが、ヨーロッパと米国を押さえた今、残りはアジアの資本なので中国と手をつなぐことでそれを果たそうとしている」と延べ、講演を終えました。表面的な世界の裏側で何が行われているのか、よく知らない私にとって目からうろこの連続でした。 
新刊紹介
もうひとつの
世界がやってくる
――危機の時代に新しい可能性を見る

世界書院、2009年 1995円(税込)
著者紹介:1952年宮崎県生まれ。慶応義塾大学大学院経済学研究科博士課程修了。神奈川大学経済学部教授。元アソシエ21事務局長。著書に『マルクスを再読する』(五月書房、2004年)、『マルクスだったらこう考える』(光文社新書、2004年)


【目次】
序文 いま世界は
1章 新たな階級闘争の始まり
第I部 マルクス
――せまり来る資本主義の崩壊と未来
第II部 スピノザ
――未来に希望を持って生きるとは
第III部 ネグリ
――やがて来る新しい未来へ
第IV部 普遍的普遍主義に向って
 新自由主義イデオロギーに対抗して、資本主義経済システムが生み出す諸問題について省察し、そして、その後に来る社会を想像し創出するために、もっともいいアイデアを、ネグリからスピノザを経由してマルクスへと至る思想の系譜が生み出してくれる。今、マルクスを読むとしたらどういう可能性で読むべきかを明らかにし、また、マルクスの思想の源泉としてのスピノザの思想(スピノザ的なるもの)、および、スピノザとマルクスの延長としてのネグリの思想を明らかにする。さらに、マルクスとスピノザ、そしてネグリの構想する共産主義とは何か、また、それによって新しい社会はどう構想されるのかという問題に対して回答を与えることを試みる。日本マルクス派において、マルクス思想の再構成を、ネグリからスピノザの思想的な系譜を参照することによって、試みる意欲的な著作である。

美術展

ペシャワール会DVD販売中

 6月2日(火)、船橋市勤労市民センターにおけるペシャワール会福元満治事務局長のアフガニスタン現状報告と訴えの一部始終を「We命尽きるまで」の藤山顕一郎監督が熱く撮ったDVDを希望者に頒布します。送料別で1枚千円。編集完成まで若干日時がかかります。ご了承下さい。お申込は『コモンズ』まで

コモンズ川柳

乱 鬼龍 

田母神 死神と読めてくる―平和世論 

俗論をテレビは今日もほしいまま 

腐朽する自由ばかりは充ちあふれ 

一身に背負うものあり日々重し


編集室から

●中国北京の天安門広場の南に毛沢東主席記念館がある。その1階中央ホールに水晶製のケースのなかに特殊な防腐処置を施された毛沢東の遺体が安置されている。1980年代半ばに、わたしはこの場所を訪れ、ライトに照らされた毛沢東の遺体に対面したことがある。革命中国の変質と共産党一党独裁のおぞましさを見た思いがした。10月1日の「戒厳令」状態の中の中華人民共和国建国60周年祝典の報道をみて、いよいよ一党独裁も末期的症状にまですすんでいると感じた。その中国の民衆の中で「毛沢東」が復活しつつあるらしい。コモンズでもこの間のこの問題への取り組みの遅れを反省して中国革命の過去・現在・未来を取り上げていきたい。(生)

次号予告

■オバマ来日 日米首脳会談の行方
■労働者派遣法抜本改正/10・29集会の報告
■世界社会フォーラム プレシンポ報告
■「地方から」「いま、韓国では」
■「協同組合運動とは何か」など連載ほか
■現場からの通信・原稿をお待ちします。


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