|
シリーズ |
いま、世界経済に何が起こっているか(1) |

左翼政権とユーロ圏解体を画策する金融権力
――ギリシャ国債投機が意味するもの |
【編集部注】財政危機に陥ったギリシャに、EUとIMFが3年間で総額1100億ユーロ(14兆円)規模の融資を決めた。世界経済危機の新たな引き金を引くものとなるか。折から、中国では、国家の威信をかけた上海万博が開幕し、この後の中国バブルの破綻も懸念されている。
世界経済に、今、何が進行しているのか。本山美彦(京大名誉教授)さんの3回にわたるシリーズでこの問題を解いていただきます。 |
|
1アジア通貨危機の再燃
金融投機が収まっていない。08年危機に対処するために金融機関に注がれた史上空前の公的資金が、08年次をはるかに上回る規模で弱小国の国債を投機対象にしている。
思い起こせば、97年のアジア通貨危機は、投機筋がタイ・バーツをはじめとしたアジアの通貨、国債、株式の空売りを大々的に仕掛けたことによって、一挙に引き起こされたものである。それは、実物経済の弱体化とはまったく別の要因で作られた投機であったことが、その後のアジア経済が日欧米を上回る成長を示していることからも明らかであろう。アジアは、通貨危機時に国内経済システムの根本を米国の金融機関によって変容させられた。危機を利用して、米国の大手金融機関は、コンサルタントとして、アジア各国の政府機関に入り込み、一気呵成にアジアの金融市場を開放させてしまった。しかし、その結末が、アジア通貨危機を上回る恐ろしい08年金融危機の発現であった。
いま、ギリシャで、南欧で、より大規模な投機が継続している。これは、早晩、英国へ、日本へ波及し、最終的には米国をも巻き込む本格的な世界恐慌をもたらすであろう。
2左翼政権つぶしで大儲けする金融資本
ギリシャで危機を煽っている米英の金融権力は、左翼政権つぶしとユーロ圏解体を狙いとしている。いずれ、この両者は、投機筋に敗れるであろう。しかし、投機筋は、米国政治権力の思惑を具体化させた瞬間に、自らの命脈をも断つことになるだろう。
09年10月、ギリシャの中道左派政党、「全ギリシャ社会主義運動」(PASOK)党が5年ぶりに政権を保守の新民主主義(ND)党から奪還した。PASOKは、軍事政権の崩壊後、74年9月に急進的左翼政党として創設されたものである。党首のアンドレアス・パパンドレウは、マルクス経済学者である(元首相の息子)。そして、81年10月、政権を獲得し、ギリシャ史上初の左翼政権を誕生させた。90年にNDに敗れ、野党に転落。党首交代後、PASOKは、96〜04年まで政権に復帰、そして、09年5年ぶりに政権を奪還した。新党首は、アンドレアスの息子、ゲオルギオス・アンドレアス・パパンドレウ(元首相の祖父と同名)である。
左翼政権誕生直後に、ギリシャの巨額の財政赤字が、金融筋によって喧伝されることになった。財政赤字は左翼政権の責任ではない。前の保守政権から受け継いだマイナス遺産である。それは、米国発の金融危機の後遺症である。にもかかわらず、米英の金融権力は、ギリシャ財政危機を左翼政権の宿痾と断定し、悪辣な投機を仕掛けている。
左翼政権成立とともに、09年財政赤字の対GDP比が12・7%にものぼることが、マスコミを賑わせた。財政赤字の対GDP比3%以下に抑えるEU合意違反として、ユーロが売られた。
金融権力に追い立てられ、前政権の付けを払わされている左翼政権は、自らの基盤である福祉政策を崩さざるを得なくなった。08年の世界金融危機を引き起こした主犯の一角である格付け会社が、ギリシャ国債の格付けを、ボロクズ寸前にまで大幅に引き下げた。そのために、国債の金利は8%近くにまで高騰した(国債価格が暴落すること)。ギリシャの国債残高は対GDP比123%である(OECDによる11年度推計)。
左翼政権は、厳しい緊縮策に出ている。付加価値税の増税、脱税防止策導入、公務員給与や福祉予算の歳出減等々。ギリシャの脱税比率は25%にも達する。
ギリシャの民間労組「労働総同盟」(GSEE)と公務員労組「公務員連合」(ADEDY)とを合わせた組合員は、275万人、人口1100万人の4分の1もいる。ギリシャでは今年に入ってゼネストが敢行されている。130万人を超える人々が、ストに入り、空港、鉄道、フェリー、学校、銀行、テレビ局など公的機関のほとんどがストップし、民間活動も半休業状態となっている。首都アテネのデモを支援した警官、消防士200人が、同情ストを実施した。今後も税務職員、教員、衛生関係者、裁判所関係者、地方公務員などのストライキが予定されている。
3国債の空売り
投機筋は、空売りで儲ける。現物国債を借りて、それを先物で大量に売り、十分現物の価格が下がった時点で買い戻し、借りた相手に現物で返せば、巨額の儲けが出る。しかし、その投機に煽られて金利が高騰し、社会は金融危機に見舞われる。事実、ギリシャでは、国内の銀行から今年の1月と2月でじつに100億ユーロ(1兆2500億円)も流出した。ギリシャのGDPは35兆円である。巨額の資金が一瞬にして引き出されたのである。
国債価格が下がると、破綻したときの保証を意味するCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)価格が上がる。CDSとは手持ち証券価格が暴落したときに一定の価値保証をする約束のことである。CDSが、国債がらみで投機対象になる。
パパンドレウ首相は、4月9日、オバマ米大統領と会談し、CDSなどの投機的な取引の抑制に協力を求めた。投機筋の売買によって、ギリシャ国債の流通利回りが急騰させられ、財政再建が困難になっていると同首相は強調した。
相対で取引される(市場を通さない)CDSの実態は、把握しにくい。国際決済銀行によると、CDSの取引残高は金融危機で大きく減ったものの、09年6月末で世界で36兆ドル(約3200兆円)にのぼる。米英両国が取引の主流である。これに、ユーロ圏は強く反発している。ギリシャ国債投機は、米英金融権力によるユーロ圏解体の策動の現れである。
財政赤字の対GDP比で、世界1位アイスランド15・7%、2位ギリシャ(上述)、3位英国12・6%、4位アイルランド12・2%、5位米国11・2%、6位スペイン9・6%、7位フランス8・2%、8位日本7・4%である。次に投機の魔手にかかるのはこの順番である。
オバマ政権は、ゴールドマン・サックス批判をしているが、CDSという本丸攻撃を注意深く避けている。いよいよ世界恐慌の荒々しい跫音が聞こえだした。
(第2回は中国の予定です)
 |
連載
「資本主義の破壊的な開発モデルが地球と人類を脅かしている」 |

コペンハーゲンで行われた気候変動会議における
ベネズエラのチャベス大統領の演説(3) |
| 翻訳 青西靖夫(開発と権利のための行動センター代表) |
|
【編集部注】 昨年12月16日にコペンハーゲンでおこなわれた気候変動会議における、ベネズエラのチャベス大統領の演説の翻訳である。翻訳者の青西靖夫氏の了解を得てここに紹介する。 |
|
より公正で公平な経済体制を
すべての破壊的なパノラマの原因は、資本による破壊的な代謝システムにあります。それが体現しているものがつまり資本主義なのです。解放の神学の著名な神学者であるレオナルド・ボフから少々引用してみたいと思います。
「何が原因なのでしょうか。原因は物質的な蓄積と限りのない進歩を通じて幸せを追求するという夢にあります。そのために科学や技術を利用し、大地の資源を見境なく搾取しようとするのです。」またチャールズ・ダーウィンを引用して次のようにも語っています。「最も強い者が生存するといいますが、それらは弱い者たちの灰の上に生き続けているのです」。
また私たちはジャン・ジャック・ルソーの言葉を忘れることはできません。「強い者と弱い者の間で自由は抑圧される」と。だからこそ帝国では自由について語られるのです。それは抑圧する自由であり、侵略する自由であり、暗殺し、抹殺し、搾取するための自由です。しかしルソーは救いのある言葉を添えています。「法だけが自由にしてくれる」。
いくつかの国はこの会議でも文書が残らないように画策しているようですが、それこそ法を求めていないからなのです。規制されたくないのです。そうした規則の欠如こそが、彼らに搾取を続ける自由を与え、破壊的な自由を許容するのです。この会議で、そして街路で圧力をかけましょう。この会議の場において、地球の最も力ある国々がはっきりと約束をすることを求めていきましょう。
レオナルド・ボフについてはご存じでしょうか?私は以前から彼の著作を読んでいました。
「繊細な地球は無限のプロジェクトに耐えられるのでしょうか?」資本主義の主張において、無限の開発主義とは破壊的なモデルであることを認めましょう。その上でボフはこう問いかけます。「コペンハーゲンに何を期待することができるでしょうか?」次のような短い告白をしましょう。「現在のままでいることはできません。私たちは方向を変えなくてはなりません。皮肉も、嘘も、ダブルスタンダードも、どこから出たかわからない文書もなしに、真剣に」。
皆さん、いつまでベネズエラから問いかけ続けるのでしょうか? このような不正義と不平等がいつまで許されるのでしょうか? 現在の国際経済体制、市場メカニズムにいつまで耐え続けるのでしょうか? VIH−SIDAのような疫病に人々がやられていくことをいつまで許すのでしょうか? 飢える者が自分たちの子どもたちにすら食事を与えられない状況をいつまで許すことができるのでしょうか。数百万という子どもたちが治癒可能な病で死んでいくことをいつまで許すのでしょうか? 力ある者が他の民族の資源を奪うために引き起こす武力紛争で何百万という無実の人が虐殺されることをいつまで許すのでしょうか?
世界中の戦争と暴力を止めろ! 世界の民衆は、世界を支配し続け、搾取し続けようとする者たちに、帝国主義者たちに要求します。帝国主義の基地はいらないし、クーデターもいらない! より公正で公平な経済体制を作りだしましょう。貧困を根絶し、早急に温室効果ガスの排出量を削減し、環境の悪化と気候変動による悲劇を避け、自由と連帯というより高い目的に手をつないでいきましょう。
この地球を生命と平和と
すべての人類の友愛の天国に
皆さん、200年ほど前、世界的な視野を持つベネズエラ人であり、この国の解放者であり、また先覚者でもあったシモン・ボリーバルは、後世に意志のみなぎる次の格言を残しています。「自然が刃向かうのであれば、戦い、我々に服従させよう」。
ベネズエラ・ボリバル共和国は、ちょうど10年前、「バルガスの悲劇」と呼ばれる過去の歴史の中でも最悪の自然災害、気候災害を被りました。その同じ年から、ベネズエラでは、全ての人々のために、不正義を乗り越えるために革命を続けてきました。それは社会主義の道を通じてのみ可能でした。社会主義、カール・マルクスが語ったもう一つの亡霊も、「反亡霊」として、その辺を歩き回っていますが、社会主義こそが向かうべき道なのです。それこそが地球を救う道であり、私にはこのことについて一つの疑念もありません。資本主義は地獄、世界の破壊への道なのです。ベネズエラは、この社会主義のせいで、北米の帝国主義の脅迫を受け続けているのです。 この地球の人々、そして各国政府に対して、ALBAを構成する国々として、この地球の多くの人々の名において、解放者シモン・ボリーバルの言葉をもって、私は心から呼びかけたい。「もし資本主義の破壊的本性が刃向かうのであれば、資本主義に対して闘いましょう。資本主義を私たちに服従させるのです」。
歴史は私たちに団結と闘争を呼びかけているのです。資本主義が抵抗するのであれば、私たちは資本主義に対して闘い、人類の救済の道を開かなければならなりません。キリストの旗を掲げ、マホメットの旗を掲げ、平等と愛と正義と人道の、そして真の人道主義の旗を掲げて闘わなくてはなりません。さもなければ人類は消滅することになるでしょう。
この地球は何十億年もの間、人類という種がいない時代を生きてきました。つまり地球の存在のためには、私たちの存在は必要とはされていないのです。その一方、私たちはこの大地がなくては生きていくことはできないにも関わらず、エボ(モラレス大統領)や南アフリカの先住民族の兄弟たちが言うようにパチャママ(母なる大地)を切り刻んでいるのです。
最後に、フィデル・カストロの言葉を聞きましょう。「絶滅危惧種は人類である」。
ローザ・ルクセンブルグは「社会主義か野蛮か」。キリストは「貧しい者はさいわいである、天国は彼らのものである」。
大統領各位、そして皆さん、私たち人類は、この地球を人類の墓ではなく、天国とする力を持っているはずです。この地球を生命と平和とすべての人類の友愛の天国に。
どうもありがとうございました。
|