第25号(2010/7/5)●8面
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針生一郎さんを偲んで
日本アジア・アフリカ・ラテンアメリカ美術家会議運営委員 
佐藤俊男 

 1975年秋、東京都美術館新館落成を機に従来の都美術館の団体展運営に批判的だった画家・彫刻家達によって、東京展市民会議、無所属美術家会議、アーティスト・ユニオン、日本アジア・アフリカ・ラテンアメリカ美術家会議
(JAALA)等の新しい運動が、日本画壇への批判も前提に次々組織された。

JAALAの結成は1977年5月、創立にあたっての針生さん起草の趣旨は「第二次大戦後、美術館・美術市場・美術ジャーナリズムの活動は国境を越えてひろがり国際化は多様化し、そのなかで既成の芸術概念を打破し、コミュニケーションの新しい回路を生み出そうとする前衛芸術や反芸術の運動は、小刻みなサイクルで方法論や方向性が交替し、その結果、もっとも反逆的・実験的・尖端的な芸術も一国の代表として政府の保護と推進を受け、国家の制度を超えることができないという逆説が生じた。それに対して第三世界の美術はいまなお商品・職業・制度として確立されていないが、生活の現実と解放の闘いに深く結びつきながら近代化=西洋化とは異なる方向を模索している。アジア・アフリカ・ラテンアメリカなど民族解放闘争の中で闘いながらエネルギッシュに美術を創造している美術家たちと呼応し、第三世界の美術作品・美術家との交流を通じて歴史を検証し直しながら芸術創造を目指すことを理念とする」

この趣旨のもとに全国の美術家約150名の賛同者で結成された。議長は針生一郎、副議長は富山妙子・水谷勇夫、事務局長は福田恒太。77年7月に第一回公開シンポジウム「戦争美術とわれわれ」パネラーは針生一郎・ヨシダヨシエ・山下菊二・桂川寛と、そうそうたるメンバーで起ちあげた。翌年78年7月、第一回「第三世界とわれわれ展」(メインテーマ「人間と自然の復権」)を新装なった東京都美術館でビエンナーレ方式(2年に1度)で開催。その中にパリで開催された「パレスチナのための国際美術展」に出品された作品中、38カ国の作品100点を特陳、パレスチナ美術家総同盟のムスタファ・ハラージをベイルートより招待、国内出品者は170名で作品約200点。その中には三里塚芝山連合空港反対同盟委員長で鉄の彫刻家・戸村一作氏が作品「闘う人」を出品、シンポジウムはパネラーとして、M・ハラージ、PLO駐日代表アブドル・ハミード、戸村一作、針生一郎が講演。
この頃、針生さんはパレスチナ問題を理解させるために奔走していた。虎ノ門の教育会館などでパレスチナ支援の集会をたびたび開催、支援者の間では「パレおじさん」というニックネームで親しまれていた。私も印刷物のデザインなどで手伝い、また、PLO駐日代表部でパレスチナ理解のための日本人向けの月刊誌「フィラスティン・ビラーディ(パレスチナ我が祖国)」などのデザインを手伝っていました。アラファトPLO議長が二度来日したときは、歓迎のポスターなどを制作、針生さん、はじめJAALAの数名のメンバーと共に歓迎レセプションに招待され、イスラエルと闘っている頑強な精神と肉体を持ったアラファト議長と握手したときは大変な感激でした。(中略)
 活動として、芸術運動として針生さんの指導の中心は、美術家の民衆レヴェルでの国際的な連帯を築くこと、美術家の自主的な運動としてのネットワークの形成であった。また、芸術表現形態においては、モンタージュ手法の展開が重要であると。
 2005年、丸木美術館アートスペースで私の個展を開催したときに針生さんに書いていただいた文章を紹介し、針生さんの追悼文を終わります。
針生さん、われわれを長い間、ご指導いただき本当に有り難うございました。
(全文は『季刊 変革のアソシエ』夏季号に掲載されます。)


針生一郎
「佐藤俊男の仕事を見直そう」
 彼がデザインで修得したフォトモンタージュの技法で大型の絵も発表してきたことは、世間では案外知られていない。しかし、韓国のソウル国立現代美術館長・金潤珠がソウルの交流展で激賞したように、佐藤は政治的風刺画またはアジ・プロ画では日本の第一人者といっていい。とりわけ、戦争屋ブッシュの登場以来、彼の創作する〈大型ポスター・シリーズ〉は、掛軸状に縦長の画面にブッシュ、小泉、ビンラディン、フセイン、アラファトらと多くの骸骨を組みあわせて、直裁強烈なアピールを放つ。
 昨年末、わたしはフォトモンタージュの創始者で、一貫した反戦・反ナチの生涯にポスター、装幀、舞台装置も多く手がけたジョン・ハートフィールドの実弟による評伝を刊行した。いや、17年も前に翻訳を終えていたが、同版を大幅に削り、印税なしでやっと刊行にこぎつけたのだ。佐藤俊男はその直系で、モンタージュなしに今日のリアリズムはありえないと痛感させる。だが反面、モンタージュが既成の美意識や自意識をつき破らず、劇的効果だけ求められると、作品はひどく空疎なつくりものになってしまう。佐藤の仕事も、その両面から検証される必要がある。

針生さんの略歴

 仙台市生まれ。東北大文学部卒、東大大学院で美学を学ぶ。美術家の岡本太郎や文学者の花田清輝、安部公房らによる前衛芸術の研究会「夜の会」に参加。戦後の芸術運動の最前線で活躍した。美術のほか文学の評論も手がけた。
 軍国少年だったことへの反省から、民衆の側に立った歴史と平和を探る思想を模索。戦後、日本共産党に入党したが1961年に除名された。その後1980年代はじめに発足された「共産主義者の建党協議会」に参加し、以来今日の「革命21準備会」顧問に至るまで、コミュニストとしての志を生涯貫いてこられた。
 1968年にイタリアの国際美術展ベネチア・ビエンナーレの日本館コミッショナー、1999〜2008年、美術評論家連盟会長。和光大学名誉教授。著書に『針生一郎評論』全6巻、『戦後美術盛衰史』など。

新刊紹介
本山美彦 著
オバマ現象を解読する
    
金融人脈と米中融合
ナカニシヤ出版
376p/19cm/B6判
定価(本体2500円+税)
「正義の戦争」を担う者がキリスト者であり、「帝国」米国に反抗する者たちは「反キリスト者」=イスラム教徒たちであるという図式が、米国市民の深層心理に作用している。これは、否定できない米国社会の一面である。「オバマ現象」も同じ構図に乗っている。こうした催眠から市民が冷めることを恐れる権力者たちは、具体的で目に見える敵を作り続けて、市民を「正義の戦争」に駆り立て続けようとするだろう。しかし、国境を越えて寄り添う良心的な市民たち(マルチチュード)は、目覚めてしまっている。(「はしがき」より)

ペシャワール会DVD販売中

 6月2日(火)、船橋市勤労市民センターにおけるペシャワール会福元満治事務局長のアフガニスタン現状報告と訴えの一部始終を「We命尽きるまで」の藤山顕一郎監督が熱く撮ったDVDを希望者に頒布します。送料別で1枚千円。お申込は『コモンズ』まで

コモンズ川柳

乱 鬼龍 

総選挙こんな程度のやかましさ

官房費みんなもらったペンの先

相撲道清めの塩が足らな過ぎ

洗脳のテレビのワナにひっかかり

その先の先の先行く党がない

編集室から

●この蒸し暑いなか、参院選で奮闘されておられる全国の皆様に陣中お見舞い申し上げます。さて、今号は、6ペイジ建てとさせていただき、その代わりに発行日を早めて5日発行としました。大きな理由は参議院選挙投票日の7月11日に間に合うようにいうことと、前号まで諸処の事情で10日発行となっていたものを、この機会に元に戻させて頂いたということです。よって、野添憲治、本山美彦、増田幸伸各氏の連載原稿を次号掲載としました。筆者と楽しみにしておられる読者のみなさまには、お詫びいたします。(生)

次号予告

■ 参議院選挙の結果について
■ 関生春闘報告 ―7月の正念場での闘い(仮) 本山美彦
■ 「今、世界経済に何が起こっているか」
■ 第三回 日本経済の行方(仮)
■ 「地方から「協同組合論」など連載


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