■参院選の結果と課題■ |

日米同盟深化と消費税増税へ
保守翼賛体制への大再編 |
大衆闘争を強化し沖縄連帯・反安保・反資本主義政治勢力の形成を急ごう!
選挙の結果とその特徴
7月参院選挙の結果とその特徴は以下である。
第1に、民主党は、比例区の得票数では第一党の地位を維持したが、目標とした改選議席54議席を大幅に下回る44議席で、予想を超える大敗北となった。そして、自民党は改選議席38を超える51議席を獲得し、保守新党の「みんなの党」が10議席を獲得する躍進を遂げた。沖縄の普天間米軍基地移設問題と消費税増税に象徴されたように、アメリカと財界の圧力に屈して民意と公約を裏切った鳩から菅への民主党政権に、有権者は明確に「ノー」の審判を下した。その上に、民主・国民新党の与党が衆院で再可決のできる3分の2議席を占めていない状況下での「衆参ねじれ」によって、今後、菅政権は野党の協力抜きにはどんな法案も成立させることはできない窮地に追い込まれた。
第2に、この民意は旧自民党政治に戻る選択ではない。政党選択の比例票の動向をみると、民主党は1845万票で前回(2007年)より約500万票を減らし、自民党も1407万票で前回より約250万票を減らし、この二つをあわせた約750万票がいわゆる保守の第三極を自称し新自由主義路線を掲げる「みんなの党」(790万)に流れたとみてよい。ここで重要なことは、菅政権の自公政治への回帰と、「みんなの党」の政治性格からして、今次選挙を通じて保守翼賛体制への流れが強まったことである。
第3に、昨年8月に政権交代を起した「政治の変革」を求める民意は依然として底流にありながらも、民主党政権の変質と路線転換に裏切られた人々の怒りは、日本共産党・社民党への期待と支持に向わなかったことである。共産党は比例区356万票(2007年―440万)で改選議席を一議席減らし、党の総力を挙げた東京選挙区で議席を確保できず、社民党も比例票を224万(2007年―260万)に減らし、改選議席を維持することは出来ず、両党ともにその退潮に歯止めはかからなかった。
普天間問題で民意裏切った鳩山政権を崩壊に追い詰めた沖縄では、唯一「普天間県内移設反対」が争点となり、民主党が候補者を擁立することが出来ず、無所属の山城博治候補(沖縄平和運動センター事務局長)が善戦したが、共産党のセクト主義による独自候補擁立で票を割ったため、当選には至らなかった。
総じて、今次選挙の結果は、「政治を変えたい」という人々の変革への期待を引き寄せ、受け止め、信頼に足る「本物の受け皿」・左派政治勢力の不在を突き出した。
共産党や社民党を中心とした「第三極」や「護憲共同」構想などでは、最早、対抗軸足りえないということを、肝に銘じる時である。
根底にある問題
リーマンショックからギリシャ危機へと、米国発世界金融危機の進行と帝国アメリカの一極世界支配の座からの没落の中で、資本主義はその危機からの脱出の出口戦略と世界支配の新たな秩序をめぐる模索と抗争の過程にある。沖縄・普天間米軍基地移設問題―安保問題もこうした一環のなかでとらえ、闘いの運動戦略を構想する段階にきている。
今次選挙結果を、こうした時代、歴史的大転換期の流動化する情勢とそのタイムラグの中において考えると、次のことが言える。
1つは、日本の政治過程も同様に、戦後の自民党単独支配構造の崩壊・大転換の過程にあり、わが国の支配階級は新たな安定した政治支配体制をいまだ確立しえていない。すでに菅民主党政権は行き詰まっており、民主党代表選を軸にした9月政局を契機に、民主、自民、小新党入り乱れての保守大連立・翼賛体制への大再編不可避の混迷と流動過程がしばらく続く。時代は、体制翼賛会的政党大再編か、あるいは本格的な資本主義変革への再編か、激動の時を迎える。
2つは、この政治過程の大衆闘争の核心は、沖縄・徳之島民衆が普天間移設問題からその根底にある日米安保問題を突き、日米両政府と対峙していることにある。そして、この沖縄の闘いはもはや後戻りはできないところにきている。
沖縄の民衆ととともに、菅政権の自公政治への回帰を阻止し、対米追随・大企業優位の政治を変革できるのは、日米安保体制と資本主義を根本から変革する、新たな対抗軸・社会構想を掲げた新しい政治勢力の形成と、労働運動を軸に大衆闘争の強化・発展でしかない。
われわれは、過去の歴史でファッシズムの台頭を許した左翼の敗北の教訓から学び、腹を据えて、この時代の求めるところに応えねばならない。
支配政治の混迷と流動化のなかで、心ある人々とともにこの主体の準備を急ごう。
(7月24日記 A)

稲嶺市長を先頭に
新基地建設を許さない闘いを
続ける名護市政の現状 |
稲嶺与党の拡大を!
沖縄・一坪反戦地主会関東ブロック主催による「稲嶺市長を先頭に新基地建設を許さない闘いを続ける名護市政の現状」と題する緊急学習会が、ヘリ基地反対協議会事務局長で名護市会議員の中村善幸さんを講師に7月23日、中野区立商工会館3階大会議室で開かれた。中村さんは要旨以下のように話された。
今年1月の辺野古市長選では新基地建設に真っ向から「ノー」と言い続ける稲嶺進氏が当選し沖縄の展望は開きつつある。しかし、議会内では稲嶺与党は12名で、過半数に届いていない。9月15日には名護市議選があるが、新基地推進派は多数派となったあと稲嶺市長をリコールする作戦のようだ。その選挙に仲井眞知事が動いている。仲井眞は今は「辺野古に造るのは難しい」と言っているが、多数の県民が反対しているからで、推進派である事は変わらない。
だから私たちは9月の辺野古市議選には勝たなければならない。稲嶺与党は革新も保守もいる。だから従来の構図ではなく、どうやって基地反対派を拡大してゆくかが大事だ。
鳩山は基地建設に反対していたのに「負担をおねがいする」立場に転向した。菅も沖縄に基地を押しつけておいて「感謝する」といって人を裏切る。握手しながら後ろからピストルで撃つようなものだ。沖縄は長い歴史の中で、ヤマトに裏切られてきた。また我々を日本の防波堤にするのか。今度は今までとは違う。
県知事選勝利を展望
中村さんの怒りの報告に続いて多くの質問や提案があった。沖縄では、市内が区に別れていて、区長とか区行政委員会がある。名護市ではその区に政府から億単位のお金が入る。この利権を求める区内のボスが基地推進を強引に進めている事も報告された。稲嶺市長防衛のためにも、名護市議選に勝利し、11月県知事選では仲井眞を落選させ、基地建設反対派県知事を誕生させる事が求められている。
 普天間爆音訴訟団、全国基地爆音訴訟原告団連絡会議、沖縄・一坪反戦地主会関東ブロック共催による普天間基地爆音訴訟控訴審判決についての報告集会が8月2日、東京水道橋の全水道会館大会議室にて行われた。会場は早くから大勢が詰めかけ、200の席がいっぱいとなり、数十人が場内通路に立つほどになったので、予定時刻の7時より前に開会となった。沖縄・一坪反戦地主会関東ブロックの木村事務局長の司会で進行し、最初に主催者として普天間爆音訴訟団長の島田善次氏が発言。米軍のいいなりに基地被害を放置する日本政府に対し「これでも独立国か!主権国家か!」と怒りをあらわにした。特別報告として宜野湾の伊波洋一市長は普天間基地が世界一危険で、米国の法にも違反している事実を明らかにした。次に沖縄出身の照屋寛徳議員(衆)、赤嶺政賢議員(衆)、山内徳信議員(参)が普天間基地の不当性を訴えた。弁護団からの裁判経過報告では敗訴はしたが、前進もあり、希望があることが訴えられた。平和フォーラム、全労協、日本平和委員会から連帯の挨拶があった。

横田にも辺野古にも普天間にも
米軍基地はいらない!7・17横田行動 |
自衛隊は米軍の傭兵に
東京福生市の福生市民会館で、7月17日、「横田にも辺野古にも普天間にも基地はいらない7・17横田行動」が開催され約100名の参加しのもと立川自衛隊監視テント村の大洞俊之さんの司会で始まった。
この日の講演者、軍事問題研究者の前田哲男さんは、日本全土の沖縄化、沖縄の本土化として事態は進みつつあり、普天間基地問題はそのシンボルである、た。現在自衛隊の米軍との共同行動の比重が高まっており、関東においては司令部の統合が進んでいる、これは自衛隊司令部の事実上の米軍への吸収に他ならない。事実上、自衛隊を「米軍の傭兵」化することであると語った。
講演のあと会場からの質問、その後連帯の発言となった。沖縄・一坪反戦地主の上原成信さんは菅直人の発言に「人の足を踏みつけておいてありがとうとは何だ!」と怒りをあらわにした。また辺野古実の木村雅夫さん、横田基地被害をなくす会の塚本さん、元福生市議の遠藤さん等が発言し、座間の「バスストップから基地ストップの会」のアピールが読み上げられた。
横田基地へ向けたデモ
集会のあと米軍横田基地へのデモ行進が行われ、88名が参加した。ゲートま前で、申入書を読み上げたが、基地側は受け取ろうとしなかった。このあと周辺市民に戦争反対、基地撤去などを訴えながら、福生駅付近の公園までデモ行進を行った。 
都内の水道検針業務は民間の委託会社で行われているが、数年前から墨田区、荒川区などで入札(指名競争入札)が行われるようになった。しかし、それで落札した新会社が検針員不足のため検針業務を遂行しきれず、水道局との契約が解除されるという失態が起こった。そのため現在は履行能力審査方式に変わった。
本年度は渋谷、目黒区が入札の対象となり、その結果、両区に各々あった検針委託会社の営業所は渋谷区内の営業所に一本化された。そのため目黒区内の検針は一旦渋谷区まで行き、そこから再び目黒へ検針にゆくという体制になり、検針員の過重労働が発生、また水道利用者へのサービス低下などの問題が発生した。また入札に伴い、契約単価が値下げされたため、委託労働者の賃金に影響している。
当該の労組では、こうした状況に対処するため、会社側と交渉し、電動機付自転車、バイクなどの貸与と諸手当を獲得しながら、入札問題と闘っていた。(取材・東京K)
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シリーズ |
いま、世界経済に何が起こっているか(3) |

菅政治の「強い財政」症と格差社会の拡大
緊縮財政への転換 |
1賃金の低下
経済産業省が年4回(四半期ごとに)公表している『産業活動分析』がある。この報告書が、2010年6月9日に1〜3月期の賃金水準の数値を公表した。それによると、民間のサラリーマンの平均給与は、1997年が最高であった。
この年の平均給与は、年間467・3万円であった。ところが、その11年後の2008年では429・6万円にまで下がった。8・1%の低下である。ただし、この統計には、会社の役員や管理職の給与をも含めているので、普通の労働者の過酷な実体が正しく反映されていない。
低賃金層だけ取り出すと深刻な実体が浮き彫りにされる。年間給与200万円以下の人数が30%も増加したのである。300万円以下にまで対象を広げると20%増となる。ところが、低所得者層だけが増えたのではない。高賃金層も増えたのである。1500万円を超す高賃金層もまた10%弱増加している。全体として8・1%も低下しているのに、高賃金層と低賃金層の両方が増加したことは、中間層が分解し、格差社会が拡大したことを意味している。
定まった定義はないが、年間給与600〜1500万円の層を中間層と呼ぶことにしょう。社会学的には中間層とは超富裕層ではないが、適度の高所得層である経営者も含むが、ここでは、中位の賃金水準の層に限定する。600万円以下の数が約15%、700万円以下が約20%弱、1500万円以下が20%強も減少したのである。つまり、この層の一部が1500万円超の高賃金層に上昇したが、圧倒的多数がより低い賃金水準の層に転落させられた。まさに、中間層両極分解と中間層の消滅が進行してしまったのである。
悲惨なことは、格差社会の暴虐の嵐が24歳以下の若年層を直撃していることである。2000年には、この年齢層の200〜250万円層は同年齢層の8%であったが、2009年には20%強にまで増加した。300〜350万円層は12%から30%にまで激増した。逆にこの年齢層では比較的高い賃金水準層の400〜450万円層は、15%から2%台にまで低下した。つまり、所得分布が50〜100万円も低い方向にずれた。日本の企業社会には、若者の使い捨てが当たり前の風潮が蔓延してしまったのである。
賃金水準の両極分解が、昨今話題になっている売り上げの両極分解の真の原因である。低賃金層の拡大が低価格商品に傾斜し、一部の高賃金層が高額商品に傾斜する。しかし、全体として日本全体の家計支出は減少している。
総務省の『家計調査』によると、2000〜2009年期間で、項目別に見た2人以上の世帯の1か月の支出は、小遣いが37・2%減、仕送り31・6%減、被服・履物25・5%減と大幅に減少した。増えた項目の1位は通信の26・1%である。通信の中身は携帯電話関連のものである。増加したのは、医療費支出が21・1%、薬19・1%、理美容用品19・1%である。経産省の上記報告(『産業活動分析』)ですら、「賃金水準の低下は、可処分所得の低下を通じて、長引く消費低迷の要因となっている」と結論づけている(『労働新聞』2010年6月25日付、参照)。
2外圧を利用する日本政府の悪しき慣行が再現した消費税増税
も消費税を10%に引き上げる方針を示した。菅内閣は、消費税率引き上げの必要性を持ち出したために、参院選で大敗したにもかかわらず、自民党の参院選向けマニフェストにあった10%引き上げ案に乗った形で自民・民主合同で消費税値上げへの世論作りを明らかに目指している。その直前の6月14日、IMF(国際通貨基金)が、『年次審査報告』で日本の消費税率引き上げを勧告した。2011年度からの消費税増税などの具体的な財政再建策を提言したのである。日本の政府債務は860兆円超に達し、先進国の中で最悪の水準にある。IMFは、ギリシャなど欧州の財政危機問題が日本にも波及することへの懸念を強く打ち出して消費税率の引き上げを求めたのである。
『年次審査報告』は、IMFの審査チームが年1回、各国を訪問し、政府関係者たちとの検討を経てまとめられるものである。調査項目ごとに面談対象者は変わる。今回の面談対象者は、財務省、日銀、経済界など消費税率引き上げを要望する面々であった。当然、消費税率引き上げ必要論が、IMF勧告には強く反映される。そして今後、政府は、これを世界の公式の対日要求であるとの姿勢を取ることになるだろう。IMF勧告は政府にとっての錦の御旗である。
IMFは、消費税率について「段階的に15%まで引き上げれば、国内総生産(GDP)比で4〜5%の歳入増が生じる」と増税の効果を強調した。その上で、15%を軸に、14〜22%までの増税のシナリオを示したのである。『北海道新聞』(2010年7月18日付)の社説はIMFの姿勢を次のように、一刀両断に切り捨てた。
「消費税増税の必要性を強く打ち出した(IMFの)内容は、日本の財務省の見解に沿ったものだ。 IMFは、法人税の引き下げが必要だとも提言した。これは、経済界の主張と重なり合う。消費税増税と法人税減税のセットで財政再建を進める。今回のIMF報告は、財務省と経済界の路線をそのまま代弁したともいえる。しかし、財政構造を立て直すためには、国民の生活や景気動向を見据え、長期的な観点で取り組むことが欠かせない。特に消費税増税の是非は、所得税や法人税のほか、環境税のような新税を含め、税制全体の中で検討する必要がある。IMF報告を『外圧』にして、消費税論議が国民の頭越しで進むような事態はあってはならない。日本に対し、IMFが増減税の具体案まで提言するのは異例だ」。
3「強い財政」シンドローム
投機筋は、空売りで儲ける。現物国債を借りて、それを先物で大量に売り、十分現物の価格が下がった時点で買い戻し、借りた相手に現物で返せば、巨額の儲けが出る。しかし、その投機に煽られて金利が高騰し、社会は金融危機に見舞われる。事実、ギリシャでは、国内の銀行から今年の1月と2月でじつに100億ユーロ(1兆2500億円)も流出した。ギリシャのGDPは35兆円である。巨額の資金が一瞬にして引き出されたのである。
国債価格が下がると、破綻したときの保証を意味するCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)価格が上がる。CDSとは手持ち証券価格が暴落したときに一定の価値保証をする約束のことである。CDSが、国債がらみで投機対象になる。
パパンドレウ首相は、4月9日、オバマ米大統領と会談し、CDSなどの投機的な取引の抑制に協力を求めた。投機筋の売買によって、ギリシャ国債の流通利回りが急騰させられ、財政再建が困難になっていると同首相は強調した。
相対で取引される(市場を通さない)CDSの実態は、把握しにくい。国際決済銀行によると、CDSの取引残高は金融危機で大きく減ったものの、09年6月末で世界で36兆ドル(約3200兆円)にのぼる。米英両国が取引の主流である。これに、ユーロ圏は強く反発している。ギリシャ国債投機は、米英金融権力によるユーロ圏解体の策動の現れである。
財政赤字の対GDP比で、世界1位アイスランド15・7%、2位ギリシャ(上述)、3位英国12・6%、4位アイルランド12・2%、5位米国11・2%、6位スペイン9・6%、7位フランス8・2%、8位日本7・4%である。次に投機の魔手にかかるのはこの順番である。
オバマ政権は、ゴールドマン・サックス批判をしているが、CDSという本丸攻撃を注意深く避けている。いよいよ世界恐慌の荒々しい跫音が聞こえだした。
(第2回は中国の予定です)
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路面電車を守った労働組合
〜私鉄広電支部・小原保行と労働者群像〜 |
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河西宏祐 著 平原社
2009年5月発売 309頁
2100円(税込) |
「私鉄中国地方労働組合広島電鉄支部」(広電支部)について初めて知ったのは、昨年であった。朝日新聞で「正社員一部は賃下げし契約社員を全員正社員化、広島電鉄」との記事を眼にしたのである。そのときから、広電支部のことが頭のどこかに引っかかっていた。本書は表題の通り「契約社員の正社員化」に焦点を当てているわけではない。小原保行という広電支部の組合活動家の軌跡を軸にして、広電支部の歴史と特徴を浮かび上がらせているものだ。しかし、本書に出会って、ようやく頓悟した思いである。
日本の多くの組合同様、広電支部も1954年分裂に追い込まれる。そして、会社のてこ入れを受けた第二組合が多数派組合となり、少数派組合へと転落した。ここまではありきたりの話である。また、少数派となっても、組合としての節義をまもり、会社と対抗し続けたという話もそれほど珍しくはない。しかし、広電支部は、会社と対抗しつつ、第二組合を無力化し、ついには多数派組合へとのし上がり、事実上第二組合を吸収する形で統一を成し遂げたのである。
広電支部の中心的な活動家に成長した小原保行が、その中で果たした役割は大きい。孤立状態に追い込まれていた時代、いろいろな理由により職場でつまはじきにされていた労働者を集めて「蜂の巣」グループを結成し、職制の悪事を暴露するゲリラ的なビラ配布を繰り返す。これを労働者の学習サークル結成へとつなげ、反撃への橋頭堡を作る。労働者の不満や要求を巧みに汲み上げながら、「有給休暇・生理休暇の取得闘争」、「女子結婚退職」反対闘争などで部分的な成果を積み重ね、労働者の支持を拡大していく。柔軟で創意工夫に満ちた闘いを通じて、広電支部は運動の主導権を握っていく。
圧巻は、本書の表題ともなっている「路面電車を守る闘い」である。1960年代に入りマイカー時代に突入するとともに、路面電車は交通渋滞を引き起こす元凶として攻撃され、赤字部門に転落。全国的にも相次いで廃止されていった。そうした中、広電支部は自治体をも動かしながら「電車の機能を高める闘い、電車の社会性を高める闘い」を組み、ついに路面電車部門の黒字化を実現した。こうして、大都市圏では稀有な例として路面電車が存続することになり、約1000人の職場が守られたのである。
広電支部はこうした闘いを通じてついに多数派組合へとのし上がっていった。小原保行の口癖は「どんな鉄壁にも必ず矛盾がある。そこに手を入れて、こじ開けるのだ」というものである。小原保行のもう一つの口癖は、「敵は最小に、味方は最大に」というものであった。その言葉どおり、小原は第二組合員の中にも、職制の中にも味方を作り出し、職場を越えて社会的な支持をも取り付けていったのである。
「正社員一部は賃下げし契約社員を全員正社員化、広島電鉄」という記事の背後には、広電支部の苦闘の歴史があったのだ。もっとも、広電支部の成果は特異なエピソードに止まっており、社会的に広がっているわけではない。そこには広電支部にも色濃く刻印されている企業内組合という限界性もあるだろう。私自身本書を読みつつ、いくつかの疑問も持った。しかし、そうした疑問を越えて、ともかく面白い。元気を与えられる。本書から何を汲み取るかは人それぞれであろうが、必読の一書として勧めたい。(大橋直人)
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