第27号(2010/9/10)●6面
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現在の円高をどう見るか
欧・米・中の為替切り下げ
競争に直面する日本

田淵太一(同志社大学教授)

 この夏の猛暑とともに、円高が止まらない。
 九月三日現在の相場は一ドル=八四円台前半であるが、このまま事態が推移すれば、一九九五年四月に記録した一ドル=七九円七五銭という史上最高値を年内に更新する可能性が高い。
輸出依存度が依然として高い日本の巨大企業は悲鳴をあげている。たとえばトヨタは、対ドルで円相場が一円円高に振れると営業利益が三〇〇億円も減少する。しかも同社の今期の想定レートは一ドル=九〇円であるから、ことは深刻である。ここ一〇数年にわたり財界が国内の賃金・雇用を切り捨て、国内市場を軽視したツケを支払わされているのである。

背景には米国債の売れ行き悪化と
ドル信認の失墜


 基底的な要因は、日本のデフレから生じる海外との実質金利(名目金利からインフレ率を引いた値)の格差である。日米の短期金利はほぼ〇%で等しいものの、米国のインフレ率が約二%であるのにたいして、デフレに直面する日本はマイナス一・五%であり、両者の実質金利はマイナス二%とプラス一・五%で、三・五%もの開きがある。この状況ではドルが売られ、円が買われる。そのうえ米国FRBは、今年三月にいったん終了していた量的緩和政策を、この八月一〇日に再開した。これによってさらに大量のドルが市場に供給され、長期金利も低下してドルが売られやすくなった。FRBの今回の買い取り対象は長期米国債である。背景には米国債の売れ行き悪化とドル信認の失墜があるとみてよい。

欧州、中国の対応は


 欧州に目を転じると、ギリシャ危機が激化し、南欧に波及してユーロそのものの危機すら懸念された今年五月九日、EU財務相会議は市場の予測をはるかに上回る七五〇〇億ユーロという大規模な救済融資枠(ユーロ防衛基金)の設立を決定した。これを契機にユーロ周縁国を標的にした投機筋の攻撃は小康状態となっている。結果的に実現したユーロ安水準は、輸出増加による景気回復を狙うドイツなどユーロ中心国にとって好都合である。
 中国は昨年まで巨額の米国債を買っていたが、今年に入って売りに転じ、かわりに日本国債を購入している。それにより元の価値を安定させている。
 こうして、円は対ドルのみならず、主要通貨にたいして空前の独歩高である。経済学者のあいだでは、「実質実効為替レート」(主要貿易相手国通貨にたいする円の総合的価値を表す「実効為替レート」から物価変動の影響を除いたもの)でみれば、一九九五年の「超円高」に比べて現在の水準のほうが三割以上「円安」なので心配ないとの見方が根強いが、机上の空論である。円は対ドルばかりでなく、対主要国通貨全般で上昇している(名目実効為替レートは「超円高」時を超えて史上最高水準である)。「実質実効為替レート」でみれば「円安」だとする議論は、日本の名目GDPが二〇年ものあいだ五〇〇兆円のままなのに物価が下がっているから「実質」GDPは成長しているという議論と同様、まやかしである。

日銀の量的緩和は無意味
「賃金デフレ」の克服を


 ではどうすればよいのか。
 欧米と中国は為替切り下げ競争に踏み切っていると言ってよい。こうしたなか、巷間叫ばれる円売りドル買い介入実施は下策である。協調介入など主要国から相手にされないだろうし、日本の単独介入では効果が限られる。米国の実体経済(失業率、不動産市況)は今後さらに悪化し、秋から冬にかけて金融危機再燃が懸念される。その過程で米国債ひいては米ドルの信認が失墜してゆく可能性が高いことを考えれば、日本だけがドル買い介入(つまり米国債買い入れ)を行なうことはきわめて危険である。
 根本は国内のデフレ解消である。日銀による量的緩和が無意味であることは、この一〇年の経験で実証済みである。デフレは主流の経済学者が主張するような貨幣的現象ではない。これは「賃金デフレ」であり、財界と政府が進めた賃金と雇用の融解から生じている。労働者の交渉力を高め、日本経済を底上げすることからしかデフレは解消しない。
(編集部注――文中の中見出しは編集部で付けております。)


(4)

 不自由を強いられて5ヶ月余りが過ぎました。マラソンで言えば折り返し地点を回ったところではないでしょうか。私は権力によって強制的に多くの人たちと引き離されています。このことを忘れることはありません。これを忘れて獄中で呼吸しているのであれば私や引き離された人たちはピエロになってしまいます。
 先日70年安保反対の闘いで共に闘い捕らえられ中野刑務所(東京)で10ヶ月あまりを共にしのいだ先輩の元同志から葉書が届きました。「…この試練を乗り切って、また釜ヶ崎に赤い灯が消えないようにと思います」と。
 私がまだ独身のころ、彼には連れ合いさんがいて子供さんがいて生活も大変だったとは思いますが、家に行くといつもおいしい家庭料理を食べさせてもらいました。今は静岡県におられて普段のつきあいはありませんが、私たちが続けている炊き出しの会には毎年年末には忘れずにカンパを寄せていただいております。今年70才になるそうです。月日の経つのは早いものです。(8月11日水)


 7月分の報奨金1365円也。出所するまでには大阪に帰る電車賃と昼食くらいは食べれるお金が蓄えることができるでしょうか。
 朝工場に出る前に検身場という部屋で舎房着(独居房で着ている服)を作業着に着替えます。服のボタンははずさないで頭からすばやくすっぽりと脱いで舎房着をかけ、作業着(これもボタンをしたままかけてある)の胴体部分の空間に頭を通し亀が甲羅から顔を出し足を出すがごとく袖口から出を出します。私がいる工場の人はみんなそうしています。悲しくもありあわれでもあります。舎房から工場への往きかえりを短時間で済ませようとする官側の考えがあり、それに応えるように受刑者の人が思いついたのでしょう。滋賀刑務所に来て奇異に思っていることの一つです。「狭い刑務所そんなに急いでどこへ行く」です。(8月15日)


舞洲団結組の皆さんへ。
 生活保護費は少ないし限られていますね。その範囲内での生活をしなければなりません。このことを先ず自覚して下さいね。「そんなこと分かっている」という声が返ってきそうですがそれでもあえて言わせて下さい。自分が使えるお金は自分が持っているお金以上には使えませんよね。あれも欲しい、これも欲しいと思ってももう買えません。当たり前のことですよね。「またの機会にしよう」とそこでそのときはあきらめますよね。あきらめ切れなければお金を作って買いに来たらいい。だれでもそうしています。他人の商品や財産に手をつけたらあかんわね。
 釜ヶ崎解放会館は人間の尊厳を踏みにじっている自立支援センター等の施設から一人でも多くの人たちを助け出し、居宅保護を勝ち取り、次のステップに向かう支援を続けています。
 「のど元過ぎれば熱さを忘れる」ということわざがあります。そうなってはいけません。熱さ(施設で強いられた苦しさ)を絶対に忘れないで下さい。そして一人でも多くの人たちが施設から抜け出せるよう力を合わせて闘って下さい。私たちはこれからもその先頭で闘いますよ。
 「一人はみんなのために、みんなは一人のために」このことも闘うボランティアの心情として一人ひとりが心の隅に置いていて下さいね。そうしたら他人のものに手を出したり、仲間うちの暴力等々の足の引っ張り合いは無くなってゆくと期待しております。お互い助け合ってやってゆきましょう。(8月17日)


 最近勇気づけられることは、関西生コン労組がゼネストに決起して長期間闘い続けていることが機関紙の「くさり」に載っていたことです。九州の炭鉱の三池闘争のスローガンだったと思いますが「進むも地獄、去るも地獄なら進んで地獄」を思っています。ゼネストが勝利するよう願っています。がんばってください。
 以前にも少し書きましたが、私は現在のところ月に2回の面会しか許されていません。この2回の面会ですら不当な制限を加えられています。友人、知人等私が面会したいと思っている人と面会できない。貴重な時間を割いて大阪からわざわざ滋賀刑務所まで足を運んでもらったのに官側の面会拒否によって知る権利を奪われ続けています。私は納得できません。幸いにして裁判を引き受けてもらえる弁護士さんがおられましたので裁判で正当性を争うことになります。ご支援をよろしくお願いします。
 それともう一つ、私は今年7月11日の参議院議員選挙に投票することができませんでした。選挙人名簿に登録されているのにです。理由は「公職選挙法第11条による」と西成区選挙管理委員会から回答がありました。私は選管が為した行為は憲法44条に違反すると思っています。私は懲役という刑を裁判所より刑務所において果たさせられているだけであり、選挙権を奪うなんてことはもってのほかのこと。受刑者も当然のこととして国政に参加すべきことと思っています。この件も幸い引き受けていただける弁護士さんおられましたので裁判で争うことができます。この件もご支援をよろしくお願いします。
 残暑厳しい折、皆さんも熱中症に気をつけてください。私は朝昼夕と房内のポットに注ぎ込まれるお茶を多く摂取するよう心がけています。
 8月18日(水)せみしぐれの中で。
書評

新しい労働社会
 ―雇用システムの再構築へ


濱口桂一郎著、岩波新書 

はじめに

 著者は大学の教授を経て、現職は独立行政法人「労働政策研究・研修機構 労使関係・労使コミュニケーション部門」統括研究員という肩書きです。
 著書は、派遣労働法の問題点、非正規労働者問題にふれ、現在の大手企業の労使関係の変化や行政指導、政府関係の諮問・審議委員会に期待し、「働くことが得になる社会」をめざして「雇用保障と生活保障」を述べ、「新たな労働者代表組織の構想」を展望しているようです。
 それは「現在の正社員組合が職場の過半数を占めているからといって、その過半数組合がそのまま職場の労働者代表になってしまったら、それに加入できない非正規労働者や中高年の管理職は、その利益を代表してもらえないまま、自分たちの関知しないところで行われた決定を押しつけられる」と集団的利益代表の構築を訴えています。また現状から「現在の過半数組合にも労使委員会にも、あるべき労働者代表としての資格は乏しい」として、大企業の企業内組合にそのことを期待しているのか、産業別発想はなく、その発想は企業内主義に見えます。

1「序章 問題の根源はどこにあるか
  ―日本型雇用システムを考える」について

 正社員雇用労働者の特徴を「日本型雇用システム」とし、このシステムを補完する非正規労働者のことを「日本型雇用システムの外側と周辺領域」として、派遣や契約労働者などの非正規労働者、女性労働者、中小企業労働者の層の分析をしています。客観的に物事を考えれば、正社員と非正社員、期間の定めの無い長期雇用と有期雇用、大手企業中心の企業内組合と中小零細・非正規労働者の労働組合からの排除・未組織状態の両側面をトータルに見たのが『日本型雇用システム』なのだと、私は思います。
@著者は「日本型雇用システム」の特徴として、長期雇用制度(終身雇用制度)、年功賃金制度(年功序列制度)、企業別組合の3つをあげ、三種の神器としています。これは雇用管理・報酬管理・労使関係という労務管理の日本的特徴としています。これまで良く語られている説です。
A日本型雇用システムの「外側と周辺領域」について、非正規労働者、女性労働者、中小企業労働者について分析しています。非正規労働者は、外側と周辺領域ですから「日本型雇用システムが適用されず」、当然「企業へのメンバーシップを有しておらず、具体的な職務の雇用契約」であるという。従って、正社員適用の三種の神器、「長期雇用制度も、年功賃金制度も適用されないばかりか、企業内組合への加入もほとんど認められていません」ということになります。その上「賃金は時給であり、その水準は企業のいかんを問わず外部労働市場の需給関係で決定」され、「地域最低賃金に若干上乗せした程度」「契約更新を繰り返しても賃金上昇なし」「通常、ボーナスも退職金もない」状態です。
 「高度成長以前は臨時工の存在が大きな社会問題だったのですが、高度成長期の人手不足によってその大部分が正社員化し、代わって非正規労働者の主力は、主に家事を行っている主婦パートタイマーや、主に通学している学生アルバイトとなりました」とし、その後正社員との格差は社会問題とはならず、「近年、学校卒業後非正規労働者として就労するフリーターと呼ばれる若年労働者が大量に出現するとともに、家庭責任のためにパートタイム就労によって生計を立てざるを得ない女性が増加し、このような格差の不合理がクローズアップされてきました。」との分析をしています。(つづく)
管理職ユニオン・関西 仲村実

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