第32号(2011/2/5)●8面
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書評

新しい労働社会 C
 ―雇用システムの再構築へ


濱口桂一郎著、岩波新書 


第2章
「非正規労働者の
本当の問題は何か?」について


1偽装請負は本当にいけないのか

 問題になっている「偽装請負」は、「契約形式が労働者派遣事業という実体に合わないことに対する法的形式論としての非難」であり、「請負労働法制の欠落を、派遣法制によって埋め合わせようとするためにさまざまな矛盾が生じている」だけであり、「請負労働を労働法上適切に規制」することによってのみ解決するとしています。
 戦前1911年に制定された工場法―事業請負(告示でいう派遣でない正しい請負)であっても、工場法(労働基準法制)の適用上、工場主(受け入れ企業)を使用者として取り扱っていたこと―を法的規範として再認識する必要があると。つまり戦前に戻し、製造業にも建設業の規定を適用する法制化をすればいいと著者は言っています。
具体的考え方は、「建設業における下請労働者の労災保険料は、雇用関係どころか指揮命令関係も存在しないはずの元請事業者が支払っている」「建設業では、事実上労務下請けという限りなく労働者供給事業に近い事業形態を請負であると称してきたため、労災補償責任を元請事業者が負うという、現実に対応する法制度が生き残ってきたのです」などの現行法の拡大適用なり、新たに「請負事業法」などの制定をすればと。

2日本の派遣労働法制の問題点

 著者の結論は、派遣労働いわゆる間接雇用はOK、EUのようにしたらどうかということに過ぎません。しかし、EUのような産業全体に規定力を持つ労働組合運動が日本には存在しないことは、先に私が批判したところです。
 そもそも”一時的・臨時的労働“で、”専門的“で”賃金も高い“ということだったものが、まったく逆の、何でもありの「派遣」労働の現実があります。著者も認めているように「企業内教育訓練システム」が主で、それから排除されている派遣をはじめ非正規労働者の「職業キャリア」は、下請で事業を行う関連会社や協力会社の正社員という形で採用を、といっています。間接雇用の派遣労働を認めることと矛盾する主張をしています。「ファイリング」の削除、専門職種はもっと絞るべきですし、著者とは反対の規制強化、ひいては派遣労働(間接雇用)をなくすことこそ必要だと、私は考えています。

3偽装有期労働にこそ問題がある

 著者は、日本の現状は「労働法制は有期雇用契約をほとんど規制していません」としています。そしてEUの例と自身の考えを述べています。
・EUの例:出口規制↓イギリスでは更新時に正当な理由がなければ有期契約4年で無期契約、スウェーデンは3年、オランダは3年または更新2回まで。入口規制↓ドイツでは有期契約の締結に原則として正当な理由が必要。いずれの国においても、これらの制限に違反すれば無期契約と見なされる。雇止めは解雇と見なされる。(94p)
・有期労働契約をどう規制すべきか。2007年11月制定の労働契約法は、有期契約について期間途中の解雇の禁止と、「必要以上に短い期間を定めることにより、その労働契約を反復して更新することのないよう配慮しなければならない」といういささか法的効果の不明な規定を設けているだけです。(95p)
・有期契約の無期契約への転化は現在の判例法理では否定されているので、やるなら立法によってやるしかない。(95p)  
・勤続期間に応じた一定率の金銭支払い義務の法制化を。(97p)
 著者の考え方は、派遣労働、有期労働の利用を認めて法制化する。そしてEUのように均等待遇にすべきと。
 しかし、具体的提案とそれを実現させる勢力、運動なしで実現することはない。結果的に、差別と貧困をもたらし、安上がりの非正規労働としての派遣労働や有期雇用形態をなくすには、仮に著者の言われる「派遣労働、有期労働の利用を認めて法制化」であったら、よほどの厳しい規制をしないと労働者保護は崩れる。そんなことより、間接雇用禁止、有期雇用の位置づけを明確にすべきです。

 私は、こう考えます。入口(採用時)規制と利用規制、均等待遇と入口規制、つまり有期雇用は高賃金(正社員より高い最低賃金)を具体化する。利用規制も、現在の26種を相当圧縮した高度な専門職に限定する。出口規制、その業務が存在する場合は、無条件に直接雇用、正社員化、一定期間以上勤務は無期契約とする。製造業は、製品のモデルチェンジ・新製品の違いはあるものの製造・組立ラインは企業が消滅しない限り継続して、細切れ雇用禁止(EX1年以上2年以内)、人の入れ替などの偽装有期は禁止、違反企業には事業停止処分の罰則と労働者の賃金保障をさせることが必要です。(次号につづく)

管理職ユニオン・関西 仲村 実 

新刊紹介

季刊 変革のアソシエ No5
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季刊『変革のアソシエ』NO.5発売! 2011.1.30


●特集I
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■関西生コン労組ストが切り開いた地平 木下武男
■関西生コンの闘いが示した協同組合運動の新しい可能性 丸山茂樹
■〈インタビュー〉現代資本主義に風穴をあけた関西生コン闘争 田淵太一
―注目すべき闘いの普遍的性格―

●特集II
■モノとカネの「自由」と人びとの生存権
―「平成の開国」って何なんだ
■自由貿易・投資は繁栄と成長をもたらしたか 小倉利丸
■自由貿易と農業―TPPって何なのだ!― 大野和興
■自由貿易は食卓を襲う―TPPと食の安全― 山浦康明
■膨張したマネーが世界の不幸を生んでいる 稲垣豊
■《資料》「いらない!APEC」横浜民衆フォーラム「横浜民衆宣言」
◆新潟・遺伝子組み換え稲裁判報告 天明伸浩



◆研究の現場から 高原幸子/松田博/羽後静子/宇波彰
◆文化通信 村上良太/西沢江美子
◆《特別講座から》自著を語る 部落は文明的存在である 川元祥一 
◆book review 崔勝久
◆cinema review 中村香代子

A5判96頁
編集/「変革のアソシエ」編集委員会
発行/変革のアソシエ
〒164-0001 東京都中野区中野2-23-1
ニューグリーンビル309号
電話:03(5342)1395
発売/JRC
定価(本体1000円+税)


財政赤字を考える

草島勇太 

 現在の日本の財政赤字は、国と地方を合わせて約840兆円あります。国民一人当たりにしますと600数十万円になります。日本の国家予算のだいたい半分が赤字国債でまかなわれています。国民一人当りにしますと月収10万円で20万円の生活をしているのと変わりありません。景気が良くなり利息が自然利子率(5%)になりますと840兆円の赤字国債の利息は42兆円になり、だいたい予算の税収と同じ程度になり予算を立てることが出来なくなります。資本主義の歴史を見ますと18世紀のオランダのチューリップバブル、1930年代のアメリカの株式投資バブル、現代のITバブル、今日のアメリカのサブプライムバブルなどなにかのバブルの弾けたあとに、需要不足がわかるというケースがほとんどです。不況は需要不足(生産過剰)によって起こります。ケインズは「雇用、利子および貨幣の一般理論」という本の中で社会全体の「有効需要」の大きさが産出量や雇用量を決定するという理論を提示しました。現在地方銀行で保有している国債は約36兆円あります。金利が1%上昇すると約4兆円のリスクが発生します。予算の50%以上を赤字国債にたよることは可能でしょうか? 限界でしょうか?

変革のアソシエ

近現代史講座のご報告

増田都子 

 新年最初の近現代史講座の内容は「高度経済成長と世界」です。日本の1955年ころからの右肩上がりの驚異的な経済成長は『奇跡』とも言われたのですが、それが、なぜ、可能だったのか? その陰で、どんな人たちを犠牲にしてきたのか? 誰が利益を得たのか? ということで、デヴィ夫人も資料に登場…インドネシア戦後賠償ビジネスと密接な関係…ベトナム戦争、沖縄返還、『象徴』であるはずの昭和天皇の数々の憲法違反の動きとも密接に絡まって展開。冷戦、そして何百万という死者、今に続く枯葉剤等の犠牲者を出したアジアにおける熱戦の最大の受益国が、わが日本。
 講座後の、担当者の精魂込めた新年おでんパーティーは美味で大好評。


増田都子免職取消請求判決公判へ!
■2月10日(木)13:10〜(30分前集合)
■東京高裁822号法廷 ※同日午後6時30分からアソシエ講座です
たんぽぽ舎22周年(第23回総会)記念の集い
●『大地震が近づく浜岡原発』―原子炉時限爆弾―
 講師:広瀬隆さん(作家)
●『破綻した原発推進の地球温暖化説』
 講師:槌田敦さん(核開発に反対する会代表)

3月26日(土)たんぽぽ舎22周年(第23回総会)記念の集い
13:30 開場 会場:全水道会館5F(JR水道橋駅下車)
14:00〜14:45第23回総会 (会員以外の方もオブザーバー参加できます)
15:00〜記念講演(2人の講師)資料代:1000円
17:30〜たんぽぽ舎にて懇親会懇親会費:3000円
☆記念講演と懇親会共に参加される方は3500円です。



コモンズ川柳

乱 鬼龍 

資本主義こそを断捨離だと思う

チュニジアにつづけと乱を準備する

開国の名で亡国が押し寄せる

女子会が男社会を斬り捨てる

就活という奴隷市場に晒される


編集室から

●厳しい寒さの中、全国でインフルエンザが猛威をふるい、学級閉鎖が続いています。皆様にはお変わりありませんか。前号で、民衆が前に出て闘う歴史的激動期に入ったとしましたが、チュニジアからエジプトへ、遂にアラブ・中東に自由と民主を求める民衆革命が燃え拡がっています。アメリカのいう≪不安の弧≫に、中東から東アジアへ、沖縄・ヤマトへ、闘いの連鎖を拡げていく時です。(生)●22年前、ドプチェク元チェコスロバキア大統領は独裁者を追放した民主化闘争勝利を喜ぶ民衆の前で「私たちはいま光の中にいます。さあ、この光の中を歩いていきましょう」と演説した。その後の東欧は多くの困難を抱えているが、あの時、人々は命を賭けて自由を勝ちとった喜びに満ちていた。今、再び我々は、何者にも屈しない民衆の闘いを目の当たりにしている。アラブ諸国人民の不退転の闘いに栄光あれと願う。(幹)

次号予告

■2011年春闘方針
■TPP―2・26シンポ報告
■アラブ・中東の民衆革命
■21世紀の中国問題を考える@
■協同組合論、新防衛大綱解説A他


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